舶来(ハクライ)
「舶来」という言葉で、みなさんは何を想像されるでしょうか。日常で使われることはあまりないように思うのですが、自分の幼いころの記憶をたどると、大好きだった祖父がよくこの言葉を使っていました。
異国の地、特に西洋から船に積まれて到来した、日本国内では入手しがたい逸品こそが「舶来モノ」というイメージです。愛用の万年筆や金ぴかのライターを、光にかざしながら目を細め「これは舶来ぞ」と祖父が誇らしげに話していたのは、私がまだ小学生だった昭和40年代。というと、もう半世紀も前の話になるのですね。
一方で同じく海外から届けられたものでも、平成の時代にあって「輸入モノ」というとまったく異なる響きを発しています。信頼の国産品に対する輸入モノは、何かを我慢しているからちょっと安いというイメージを連想させます。特に食品についてはその傾向がありそうですが、日本の国に本当に誇りを持っているのかは別にしても、国産だから安心という神話は根強いものがあります。
当社の事業にとって欠かせない合板はどうでしょうか。樹種と用途の大まかなすみ分けがあって、輸入合板は南洋材か植林木、国産合板は針葉樹という構図がほぼ確立しているように見えます。年間600万m3近い需要に対して、ほぼ50:50の割合で供給されている合板は輸入・国産に関わらず、住宅建築や土木のみならず日本の経済活動に欠かせない存在です。
そのような大きな需要の狭間に、「舶来モノ」の合板をイメージし、当社は「ハクライ合板」と名付けました。一般的な輸入合板とは一線を画す、とびきり上等の舶来モノの合板です。西洋や南洋から特注仕様で届いた、普通には見かけない合板を「ハクライ合板」としてご案内中です。現在のラインアップは、アピトンやバーチなど、高比重の材を分厚く積層し、いかにもマニアックないでたちです。特にその木口に魅力を感じたユーザーの方々の発想から、新しい用途が生まれています。
そういえば、今日11月1日は祖父の誕生日。趣味や持ち物では舶来モノを好んだ彼は、日本の銘木をこよなく愛し、その産地と消費地をつなぐことを生業としていたのでした。